昔々、ゴルフがスコットランドで大きく進化しました。ゴルフクラブに飛躍的な機能アップがあったのです。
それまでのクラブがただの棒きれのように感じてしまう大改革を支えたのは、武器職人たちの知恵と技術でした。例えば、弓を作っていた職人はどの木材がしなりに強いか、狙い通りのタイミングで素早く戻るかを知り尽くしていて、その経験がゴルフクラブのシャフトを強化したのです。それ以外にも、武器職人の経験と技術が一気にゴルフクラブに投入されました。
貴族は競って、武器職人にクラブを発注しました。武器職人は本業の武器の制作をおろそかにするほど、クラブの注文に応じました。そのほうが儲かったからです。この社会現象が、ゴルフ禁止令が出される一因となったのです。この頃のゴルフクラブは、職人の手作りで、注文した人のために作り上げたオートクチュールだったわけです。
東京の世田谷にある”大蔵ゴルフスタジオ世田谷”は、パーツメーカーのヘッドとシャフトのラインアップを充実させて、実際に打ち、計測した上で、自分だけのクラブを作ることができる工房です。同じような趣意で運営している工房は過去にもありましたが、そのような工房を全て集めたといっても良いぐらいのパーツメーカーの製品が集められています。
アフターマーケットと呼ばれるパーツメーカーで一般のゴルファーに馴染みがあるのは、シャフトメーカーだと思われます。
一昔前までは特殊なゴルファーだけの秘かなチューンアップだったシャフト交換によるクラブの性能アップは、現在では当たり前のようになってきています。プロパーと呼ばれる標準装備のシャフトでは駄目なんだと考えるゴルファーもいますので、大手のゴルフクラブメーカーも販売時からシャフトを選択できるようにしています。
そのシャフトメーカーの中にも、ヘッドを作っているところがあります。様々なテストを重ねる中で、ヘッドに応えるシャフトを開発していましたが、逆転の発想で、こういうヘッドがあったらシャフトの性能を引き出せるという仮説を生み、具現化されたのです。
大量には作られていません。その理由は簡単で、何らかに特化して作られたものだからです。パーツメーカーの製品は市販品を改良することという目的で生まれ、特別なゴルファーの期待に応えるゴルフクラブになるという新しい目的を得たのです。大きなメーカーが大量に生産するクラブは、原則としてできるだけ多くのゴルファーに合うように計算されています。洋服に例えるならS/M/Lなどのサイズが選択できるものです。徹底的な調査と研究の結果で作られた標準的な洋服は、ほとんどの人が問題なく着ることができます。
しかし、特別に採寸して仕立ててもらった洋服も存在しています。ちょっとだけ腕の長さが合わなかったり、右は良いのだけど左が長いとかいうこともあります。自分用に作られたものは、サイズに関しては完璧になります。ゴルファーの中にも、市販のサイズでは合わない、という人もいるのです。
パーツメーカーの需要が増大しているのに、それを試す機会は昔のままで増えていません。大蔵ゴルフスタジオ世田谷は、あちこちに行ったりとか、一か八かでとりあえず頼んでみるという苦労を排除してくれるオアシスになります。
『自分だけに合う特別なクラブを極めたい』
『人が使っていないクラブを使いたい』
『最高のチューナップを経験したい』
そういうゴルファーは、とにかく現場に行くべきです。
試打についても充実した数値が測定できます。試打スペースで弾道計測ができるのは珍しくはなくなりつつありますが、“大蔵ゴルフスタジオ世田谷”にはTRACK MAN(トラックマン)が設置されています。TRACK MANは、多くのトッププロゴルファーが個人で所有して練習時に使用していることで有名な計測器です。レーザーでボールの回転や角度、方向など必要な情報を測定します。
大きなモニター画面でその情報を見ることができ、打ったボールがどんな弾道で飛んでいくかのシミュレーションも見ることができます。感覚ではなく、実際に目の前に提示される数字はプロゴルファーが求める精度であることが大事というわけです。自分のクラブに疑問があれば相談もできます。いわゆる工房としての機能が素晴らしいことは書くまでもありません。
もう一つ、大蔵ゴルフスタジオには”最先端”があります。『PXG』です。パーソンズエクストリームゴルフの略のゴルフメーカーは生まれたばかりですが、最もホットなゴルフクラブです。
大富豪が自分のためだけに最高のゴルフクラブを作ろうとしたお伽噺のような本当の話で始まる『PXG』は現代における伝説だという人もいます。お金はいくらかかっても良いから、とクラブデザイナーをヘッドハンティングして、最高のゴルフクラブを追求した結果、その噂を聞きつけた世界中のゴルファーからのリクエストが殺到して、クラブメーカーとして販売も始めたのは2016年、今年なのです。
大蔵ゴルフスタジオは『PXG』の正規販売代理店なので、『PXG』のクラブを打つことができます。
『PXG』でクラブの開発をしたチームは、元ピンのクラブデザイナーがリードしました。どことなくピンのクラブに似ているという感想を持つゴルファーが多いのは、そういう背景があるからだと思われます。しかし、ただ真似たものではないのです。究極のクラブを作るという目的が同じでありながら、多くの人に使ってもらえる安価なものをという大きなメーカーが縛られるルールが『PXG』にはなかったのです。
それが、今までにない素材を使い、構造も大量生産では無理だといわれていた方法を採用したゴルフクラブになったのです。
かなり詳細に個別のゴルファーのために調整できる機能を持っているとはいえ、個人的には『PXG』をパーツメーカーとするのには抵抗があるので、ゴルフメーカーの最先端として見るべきだと思います。百聞は一見にしかず。『PXG』は打ってみるべきだと思います。感覚でも、最先端を感じられるはずだからです。
ゴルフクラブは数百年間、いくども大改革をしながら進化を続けています。貴族用の特別注文品だった時代の後に、万民に合うように大量生産する時代になりました。そして、再びスペシャルな1本を求めるゴルファーにも対応できる流れが生まれています。ゴルフ史上最高性能のゴルフクラブを使える現在に生きるゴルファーとして、最先端を知るのは決して無駄になりません。幸いなことに、この手の工房にありがちな入りにくい雰囲気とは真反対で、明るく、広い店舗スペースになっています。最先端に触れてみましょう。