「ドローボールで、転がりが良いドライバーショットを打つために、トップスピンを打つ練習をしているんです」先日、いきなりそんな話をされてビックリしました。冗談で言っているのかと思いましたけど、本人はいたって真剣な様子でした。
トップスピンは、バックスピンとは逆の回転で、別の言い方だと順回転のことです。進行方向に向かって、上部が前に向かって回転していくわけですけれど、トップスピンのドライバーショットは、全てチョロのようなドロップしたボールになってしまいます。
トップスピンではなく、バックスピンを減らす低スピン化で、ボールを飛ばすことの間違いだと説明しました。本人は真面目に悩んでいましたが、説明を聞いて納得したようで喜んでいました。
ボールのスペックが気軽に計測できる
21世紀になって、ゴルファーを取り巻く環境で最も大きく変わったのは、自分が打ったボールのスペックが気軽に計測できるようになったことです。計測するスペックで有名なのは、ヘッドスピードです。1980年代後半頃に日本中でヘッドスピードの計測ブームが起きました。
横浜ゴムがプロギアというブランドでゴルフ用品業界に参入したときに、ヘッドスピード別で選ぶいうコンセプトのクラブを発表したのがきっかけになりました。
面白いことに、欧米では打たれたボールの速度であるボールスピードのほうが重視されていて、ヘッドスピードはミート率(ボールスピード÷ヘッドスピードがミート率)のためのサブ的な扱いなのです。日本人ゴルファーは経緯にこだわって、欧米のゴルファーは結果にこだわる気質があるからだと言われていますが、面白い傾向です。
ボールの方向角度、打ち出し角度、ボールの回転数…… 打たれたボールのスペックは他にも色々とあります。
全てはゴルファーのためのものです。必要なスペックに注目して、自分のゴルフの問題点を見つけたり、道具を選ぶときの目安にするのが正しい使い方です。
代表例であるボールの回転数は、基本的にはバックスピンしている回転数のことで1分間に何回転するか、という数字になっています。アイアンが高く上がって、グリーンで止まるための理想的な数値や、最低限必要な数値がありますが、最近では、ドライバーを効率良く飛ばすために適量なバックスピン数を維持することが近道なので注目されています。
ボールが曲がる原因は回転軸の傾き
さて、一般的に使われているサイドスピン量という数値ですが、これはゴルファーのために無理矢理作られたスペックです。 考えてみるとわかりますが、一つのボールが凄い勢いで回転してるわけですので、それを縦としても、同時に、横に回転するなんて無理ですし、奇妙な数値なのです。
誤解している人が多いのですけど、ボールが空中で曲がるのはサイドスピンというより、バックスピンの回転軸の傾きが原因なのです。左に傾いて回転していれば、左にボールは曲がり、右に傾いて回転していれば右に曲がるという単純な話なのです。
イメージしてみると、色々なことがリンクすると思います。強い傾斜面から打つときに、右打ちであれば前下がりは右にボールが飛びやすく、前上がりだと逆に左に飛びやすいのは、クラブを構えたときにできるヘッドの傾きに影響されるからです。
ライ角がアップライトなクラブが左に曲がりやすくなるのは左への傾きをボールに与えやすくなるからです。
ボールを曲げるために、ヘッドの軌道を意識するという考え方がありますが、その真相も実はボールを回転させる回転軸の傾きをコントロールすることなのです。
もちろん、ボールの弾道に影響するのは軌道や打ち出しの角度以外にも、フェースの向きの角度なども影響します。これらを上手く融合させて上級者は無意識にボールを狙い通りに打っているわけです。
最後に
ボールがどんな風に飛んでいくのかを計測する機器をプロゴルファーの多くが、自前で所有するようになったのはこの数年のことです。女子プロゴルファーの場合は、約15年前から、スペックを理想の数値にすることでドライバーの飛距離が20ヤード以上伸びるという方法が常識となっています。
面白いことに、男子のトッププロゴルファーはボールのスペックを計測する機器の使い方が、女子プロゴルファーや一般のアマチュアとは違うのです。
彼らは自らが絶好調時のスペックを保存しておいて、調子が悪くなったときに、どのスペックが悪くなるのかをチェックして、調子を高いレベルで維持できるようにするために主に使用しているそうです。
バカとハサミは使いよう、という諺があります。飛んでいくボールを科学することを生かすも殺すも自分次第です。21世紀にゴルフを楽しむゴルファーだからこそ、注目することをオススメします。