日本でトーナメントを開催する男子ツアーと女子ツアーは、JGTO(日本ゴルフツアー機構)とLPGA(日本女子プロゴルフ協会)が行っていますが、それぞれ特色があります。テレビではなかなか分からない、男女ツアーの違いをみてみましょう。
現在女子ツアーは、宮里藍選手のようなスターが米ツアーへ挑戦した後も、次々とニューヒロインが誕生し、とても華やかです。実際、年間試合数も2015年度は全37試合、賞金総額は33億3300万円と過去最高額を更新しています。
一方男子ツアーは、年間試合数が2015年度は全27試合、賞金総額は34億7750万円。海外ツアーとの共同主管試合が増えるなどで、3試合増えたものの、1990年代後半のピーク時には40試合を超えていただけに、まだまだ冬の時代が続いていると言っていいでしょう。
何故、このような差が出てきてしまったのでしょうか?
まず、女子ツアーに関しては、LPGAの地道な努力の成果が大きいと言えます。それまで「試合で結果さえ出せばプロ」という考えだったプロたちに、ファンやスポンサーあっての「プロ」であるという教育を行い、徹底しました。
現在も、女子のトーナメントへ出かけると、プロとの写真会や、サイン会など様々なイベントを行っています。最終日には女子プロ総出でファンサービスすることもよくあります。そして、プロの意識の中にファンサービスが定着しているのが感じられます。
さらには、こういったギャラリーへの配慮に加え、コースセッティングにも工夫がされています。
ラフを極端に長くせず、飛距離を殺さないようにし、またホールロケーション(ピンポジション)は難しいながらも積極的に攻めていけるように考えられています。もちろんすべてではないのですが、プロを華やかに演出できるようにとの配慮に、比重が置かれています。こうした工夫が最終日のバーディ合戦に繋がるのです。
ファン目線を重視し、テレビでも会場でも満足を高めた結果が、今日の女子ツアーの人気を支えているのです。
対して男子ツアーは、女子に比べ、ファンやスポンサーに対してのサービス精神が育っていませんでした。「プロとしての技術を魅せる事」に偏っていたのです。
ですから、コースセッティングも大変厳しいものです。ラフは深く、落ちたボールは見えません。セミラフ(ファーストカット)でさえ神経を使います。グリーンも硬く、そして速いです。
目安として、女子ツアーのグリーンの速さは、9~11フィート、男子ツアーは10~12フィートとなっています。しかし、男子ツアーはどんどん早くなる傾向にあり、14フィートを記録することもあります。まさにガラスのようなグリーンです。
もちろん難易度の高いコースを攻略する事こそ、プロの醍醐味なのですが、そのバランス加減によっては、選手いじめのようになってしまいます。また、あまりに罠が多いと攻撃的なプレーは、ただのギャンブルになってしまいます。
石川・松山選手のようなスターが不在というのが、男子ツアーの人気低迷の理由の一つではありますが、女子ツアーとの明暗は、プロとファン、そしてスポンサーとの関係のバランスの差ではないでしょうか。
ただ、男子ツアーもこの危機的状況を打破するために、ここ数年変わり始めています。男子ツアーを主催するJGTOはもちろんですが、池田勇太選手が選手会会長になってからは、特に選手会も率先して、行動に移しています。
プロ達に、プロらしい立居振る舞いを求め、試合会場でのブレザー着用を促すことも、試みの一つのようです。
また、スポンサー向けには、プロアマ戦でのプロ出場枠を100%スポンサーが決められるといった事を行っています。コースセッティングにもアグレッシブに攻めていけるような変化が感じられ、多方面で、少しずつ努力しているのが伺えます。
女子ツアーは現在、ツアーの8割が3日間競技ですが、4日間競技を増やして、今後は世界で戦える人材を育てたい意向です。男子ツアーも、女子ツアーもそれぞれ問題を抱え、試行錯誤しながら、ツアーを作り出しているのです。
トーナメントを観戦する際には、こういった裏方の思惑も感じながら見てみると、また違った視点で楽しめるかもしれませんよ。