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ゴルフ小説|武夫のゴルフ上達物語 #16 ~夏美とのデート~

次の日、武夫は石川町駅の改札前にいた。辺りをキョロキョロと見渡す武夫。そう、今日は夏美と中華街デートだ。実は昨日、武夫は夜ご飯を抜いた。今日の中華街ランチのためにあえて腹を空かせているのだ。昨日の優勝賞金も財布にしのばせた。懐がいつもより温かい。

ほどなくして夏美が改札から出てきた。夏美は白と薄いピンクのシャツにショートパンツ。なんて可愛いらしい格好だ。しかもその中にセクシーさが入り混じり、武夫は一瞬心を奪われてしまった。

夏美 「武夫さん!」
武夫 「ん、あ、こんにちは。」
夏美 「昨日はどうでした?」
武夫 「う、うん。良かった。」
夏美 「え?本当ですか?凄ーい!」

石川町から中華街までは徒歩で移動。昨日のコンペで優勝したこと、賞金を貰ったこと、バーディーを獲ったこと、歩いている間に色々話をした。夏美が嬉しそうな顔をしている。中華街に到着した2人は早速お目当ての店に入った。メイン通りから1本裏道に入った、分かりにくい場所にあるお店だ。ここの小龍包が通の間では評判らしい。出てきたのは見るからにモチモチでたっぷりと肉汁を含んでいそうな4つの小龍包である。

今日は天心のハシゴツアーを2人で企画しているのだ。入念にフーフーと息を吹きかけ、皮を少しだけ噛みちぎって穴をあける。口に入れた瞬間に広がる肉汁、色々な旨みが重なり、なんとも心地よい味!サッパリしてはいるのだが、中に旨みが凝縮している。2人で顔を見合わせた。

武夫 「うまっ!」
夏美 「美味しー!!」

店員のおばさんもそれを聞いてニヤッと笑っている。2人は幸せな時間を共有した。続いて2件目、こちらも小龍包が有名なお店、しかも種類が豊富だ。先ほどは小龍包だけしか注文せずに、少し気まずくなってしまったので、今回はオーギョーチも2人前注文した。先ほどの小龍包はジューシーな肉汁に感動したが、こちらの小龍包は、お肉そのものがとても美味しい。お肉を噛む度に表れる肉汁が何とも言えない。結局2人はもう2店舗回り、本場の天心を堪能した。

お腹も十分に満たされた2人は山下公園で一休みしていた。コーヒーを片手に話が弾んでいる。天心の話からいつしかゴルフの話に変わっていた。

武夫 「でもホント大変だったんだよ。シャンクが出た時は。」
夏美 「私も何回かありますよ。今までどうやって振ってたか忘れちゃうんですよねー!」
武夫 「そうなんだよ。どうしようかと思ってさ!笑」

辺りはすっかり夕暮れに包まれていた。ベイスターズのユニホームを着た人がよく通り過ぎる。そうか、今日は横浜スタジアムでホームゲームか。

夏美 「野球も一度は見に行ってみたいんですよねー!」

武夫はしばらく考え…

武夫 「行ってみる?今!」
夏美 「え?今からですか?」
武夫 「そう、今から!」

そう言って夏美の手を掴み横浜スタジアムに向かった。無意識を装い手なんか繋ぎやがって、武夫も偉くなったもんだ。球場では既に試合が始まっていた。スタンドからの大きな声援が球場の外まで響いていた。夏美の目がキラキラと輝いている。

夏美 「凄―い!なんかテンション上がってきますね!」

球場まで入ろうともしたのだが、お互い明日は朝から仕事だったため、雰囲気だけ味わって帰ることにした。帰りの電車はかなり混雑していた。2人身を寄せ合い立っている。会話ができない車内が余計に2人をドキドキさせていた。武夫を見上げるのが恥ずかしいのか、夏美はずっと下を向いていた。

デートの終わりが近づく。まだ一緒にいたい。ゴルフの最終ホールで感じたものと似ていた。今日告白しようか、いやまだ早いかも知れない、でも向こうも告白を待っているかも。別れの駅まであとわずか、だが結局、結論が出ることなく、夏美が降りる駅に到着してしまった。

夏美 「武夫さん、また連絡しますね!」

ホームから手を振る夏美。それを見て武夫も車内から小さく手を振った。ゴルフでは強気に攻めることができるようになってきたのになぁ。恋愛はまだまだ未熟者である。その時、夏美からラインが届いた。「武夫さん、本当に今日は楽しかったです。気を受けて帰ってくださいね。武夫さんといると何だか肩の力が抜けて、ありのままの自分でいられるのでとっても心地良いです。限られた時間ですが、また遊びに行きましょう!ありがとうございました。」

なんて良い子なんだ。武夫もすぐさま返信した。とても楽しい1日だった。今日告白しても良かったんじゃないか?武夫はそんな風に思い少しだけ後悔した。ただ何かが引っかかるような…。武夫はこのモヤモヤした気持ちが何なのか分からずにいた。明日の仕事のことを考えると余計モヤモヤした。なんだ仕事のことで引っかかっていただけだったのかも知れないな。

つづく

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