「これは、スタイミーだな」
狙っているグリーンの前に立ちはだかる1本の大木が邪魔で真っ直ぐには打てないときに言うゴルファーがいます。ゴルフで障害物があって直接狙えないシーンをスタイミーと呼ぶのは、廃止されたルールの名残であることを知っていますか?1952年にルールが改正されて廃止されましたが、1対1のマッチプレーにおいてグリーン上でカップと自分のボールの間に対戦相手のボールがある状態のことをスタイミーと言っていたのです。
現在ならボールをマークしてもらって難なく打つことができますが、当時はボールをそのままにしてプレーする規則だったのです。スタイミーのときは、パターではなくロフトのある番手で相手のボールを飛び越してカップを狙っていました。戦略として、わざと相手のボールがあるサイドに、スタイミーになるようにボールを止めるという駆け引きも行われていました。
マッチプレーの面白さとして、記録に残っている範囲内だけでも廃止まで約250年間も行われてきました。現在では、スタイミーという用語だけがグリーンを出て生き残っているわけです。
『ボールはあるがまま』というのがゴルフの原則で、ゴルフの面白さの根幹でもあります。それがやせ我慢だとしても、ボールが止まってしまった状況を楽しむ余裕がないゴルファーは未熟な発展途上だといえます。悪い状況をも楽しんでこそゴルフだと、スタイミーは現在のゴルファーに伝えてくれているのです。
現在では、スタイミーだったシーンでは、マークをしてもらえるだけではなく、ライン状にあるマークをずらしてもらうことも可能です。マークする概念がなかった時代に比べると幸せなことです。
ただ、注意したいこともあります。実は、マークする所作やマークをずらすときの所作などは、ゴルファーが想像する以上に多弁なのです。どんなに素晴らしいショットをしても、ファッションセンスが抜群でも、マークに関しての立ち振る舞いが台無しにしてしまうことがゴルフではよくあるのです。無意識で行っていることが、その人の本質を剥き出しにします。
ゴルフ規則では、ボールをマークする際には、ボールマーカー (小さなコインや同様の物が好ましい) をボールの真後ろに置いてマークすべき、だと書かれています。しなければならないではなく、好ましいとか、すべきというところが、ゴルファーを試しているのです。
規則違反ではないからと、適当に行っている人は、罰則はなくとも、他のプレーヤーから軽蔑されます。少なくとも、そういういい加減なところがある人なんだなぁ、というレッテルは張られます。逆に、他のプレーヤーをイライラさせるほど時間を掛けてマークしたボールを慎重に戻す人も嫌われる傾向があります。
今では世界のトッププロとなった松山英樹プロも、ボールマークの仕方がいい加減だと疑念を抱かれやすいとプロ入り直後に注意されて、現在では何らクレームがつかない正しい所作でボールをマークするようになっています。
ボールマーカーに使う小さなコインのようなものについても、ゴルファー同士でよく議論になります。遠くからでも見えるように大きなポーカーチップマーカーは違反じゃないのか?ボールマーカーとして買ったのではないバッチを使っても良いの?いずれも、ボールマーカーとして機能しているのであれば規則違反にはなりません。
ただ、大きめのマーカーを使う場合には、注意して欲しいことがあります。ホールに近づいてマークする際には小さな別のマーカーを使うように二刀流にして欲しいのです。
大きなマーカーは、とても便利ですが、目立ちますので、カップの近くに行けば行くほど、ライン上ではなくとも他のプレーヤーの視界に入ると邪魔に感じるからです。スマートに二刀流でボールをマークしていれば、心遣いができるゴルファーとしてさり気なくアピールできますし、自分としても気分が良くなるはずです。
ボールのマークがちゃんとできているのか?改めて、詳細にチェックしてみましょう。簡単なことで損をするのはもったいないことです。グリーンに乗って、一安心。パットに集中するために気持ちを切り替える意味でも、ボールをマークできることは有効です。21世紀にゴルフをするゴルファーとして、ボールをマークできる幸せを謳歌しましょう。