リオ・オリンピックでゴルフは112年振りに競技として復帰しました。世界中でゴルフはプレーされています。同じルールで行われているので、言葉がわからないところでも、現地のゴルファーに混じってプレーできることは、ゴルフの特別な魅力の一つです。
『ゴルフがどうして世界中に広まったのか?』
考えたことがないゴルファーが多いようですけど、こういう知識はスコアアップにも有効だったり、ゴルファーとして見直されたりするものなのでバカにできません。
ゴルフが面白いから広まったのです、と結論づける人もいます。間違ってはいませんが、それだけでは不十分です。たくさんの要因があるのですけど、ゴルフはその誕生の時点で、世界中に広まる運命だったといえるのです。
ゴルフの始まりは、羊飼いが杖で石ころを打ってウサギの穴に入れた遊びでした、という話をよく耳にします。ちゃんとした本などでも、そんな風に書かれている例があり、日本においては定説になっています。日本のゴルフの黎明期に出版された本の冒頭に、お伽噺として紹介されたものが、まるで本当のことのように広まったのです。
この説はロマンチックなお伽噺に過ぎず、研究者の間では一切根拠がないものとして現在では相手にもされていません。このお伽噺が広まった理由は、ゴルフ発祥説が色々あることに起因しているから面白いのです。
第二次世界大戦直前の日本も、ゴルフは日本発祥なのだと名乗りを上げたことがあります。蹴鞠に似た貴族の遊びがゴルフになった、と説明をしました。
背景には戦時体制が強化されていく中でゴルフを禁止しようという動きがあって、外来競技ではなく、日本古来の競技なのだとして対抗する策でした。このときに、ゴルフ税を作ることで禁止にされにくい環境も作ったのですが、それが現在でもゴルフ場利用税と名前を変えて残って繋がっているのです。
日本の例を紹介しましたが、ゴルフ発祥説の背景には色々あるという一例です。
羊飼いのお伽噺は、スコットランドがゴルフ発祥の地だと主張するためのものだったのです。
ゴルフが現在の形になったのはスコットランドのリンクスがあったからだというのは、全ての研究者の統一見解であり、間違いないことです。だから、現代の正式な文献には、ゴルフはスコットランドで『育ち』ました、となっています。
ゴルフを愛すればこそ、自国で生まれたことにしたいという気持ちは理解できますが、スコットランドのリンクスが全て貿易港に近いことや、初期のゴルフボールがオランダからの輸入だったことなどは証明するたくさんの書類も残っているので、ゴルフの原型はオランダからスコットランドに渡ったと考えるしかないようです。
オランダ発祥説は、その後、アイスホッケーになっていくゲームと祖先は同じということで有力な一つになっています。そのオランダに棒を使うゲームを持ち込んだのがフランスだという説も、納得するしかないような証拠も出てきて有力な説になっています。
中国の競技が発祥だという説も、古代ギリシャの兵士の遠征が発祥だという説も、それぞれに背景や証拠がしっかりとしていて調べていくと本当に面白いのです。勉強すればするほど、ゴルフの発祥について一つの結論に到達してしまうのも、ゴルフの魅力なのです。
ゴルフ発祥は諸説あり、というのが結論です。ゴルフが育ったのはスコットランドで間違いないという事実をふまえた上で、自分なりに信じている発祥説があるのが上級ゴルファーの嗜みです。
さて、最有力なオランダ発祥説とフランス発祥説には共通点があります。ボールを棒で転がすゲームだったということです。
『ゴルフの基本は転がしにあり!』有名なことわざを本当に知っていますか?文字として認識しているだけで、全く実行できていないことは『知っている』とはいえません。ゴルフの知識の多くは実行を伴ってこそ活かされ、その意味があるのです。
ゴルフが生まれた瞬間に想いを馳せながら、転がしが基本ということから逃げていないかを確認しましょう。現在のゴルフではボールが空中を飛んでいくのは当たり前ですが、パットなどで転がすストロークも健在なのです。
パットが下手な人の9割は単なる練習不足に過ぎません。パットは頭でするものと言いますが、基本を理解して、必要な練習するという決断は、確かに賢くないとなかなかできないような気もします。
ゴルフは無知であることを残酷に露呈する怖い部分もありますが、学んだことを活かせば楽しさを倍増させるという魅力もあるのです。発祥説から始めて、色々なゴルフ史に触れていくことは、中途半端なスイング論よりも何倍も自分のゴルフを充実させる可能性があります。 まずは、自分なりのゴルフ誕生物語を明確にしましょう。