「ナイスバーディーッ!」
パーより1打少ない打数がバーディーであることは今更書くまでもありません。その言葉を自らで使わなくとも初期に覚えるゴルフ用語の代表的な一つです。
同伴競技者のプレーを讃えて使うことからスタートして、自分のスコアとして常時使いたいバーディーですが、その言葉がどうしてパーより1打少ない打数で使われることになったのかは、かなりの上級者でも知らない人が多いのです。
バーディーは、鳥という意味のバード(bird)の幼児言葉です。日本語にすると”小鳥ちゃん”とか”ピーちゃん”みたいな感じになるようです。幼児に話しかけるときに使う言葉であるバーディーには幸せが詰まっているのです。どうして、ゴルフ用語として定着したかを知れば、それは尚更です。
バーディーという言葉が使われ出したのはアメリカで、20世紀の初頭だということはハッキリしているのですけれど、その発祥については諸説ありという状態です。
20世紀初頭、アメリカではスラングでバードをカッコイイという意味で使っていました。現在でいうとクール(cool)のような意味合いだったようです。これが伏線になって、アメリカではパーより1打少ないスコアをバーディーと呼ぶようになるきっかけが同時にあちらこちらで起きるのです。
記念碑などが設置されていることで有名なのは、高いボールでピンに絡めたショットを打った本人が「flew like a bird」(鳥のように飛んだ)と思わず口から出たというアトランティックシティーのゴルフコースが始まり説です。
ニューヨークのゴルフコースにもパー5を2打目で乗せたスーパーショットを見た同伴競技者が「Like a Birdie」(小鳥のようだ)と言ったことが始まりだという説があります。ニュージャージー州のゴルフコースにも発祥説があります。
共通しているのは、高く狙い通りの凄いボールの弾道を賞賛していて、スコアのことではないということです。面白いものです。パーより1打少ないスコアの要因になった凄いショットを称賛する言葉がバーディーになっていったのです。
パーより2打少ないスコアはイーグルです。鷲はアメリカの国鳥であり、バーディーよりも強い雰囲気があります。やはりアメリカ生まれの用語です。バーディーの後に生まれ、世界に広がるのはバーディーほど簡単ではなかった歴史があります。パーより3打少ないスコアはアルバトロスです。
日本ではアホウドリと訳しますが、英語圏では大型の水鳥のことでちょっとイメージが違う言葉です。アルバトロスの発祥にも面白い話が色々あるのですけど、別の機会にします。ゴルフ用語は、鳥で溢れています。たったの三つじゃないか、と思ったかもしれませんが、そうではないのです。
ゴルフコンペに参加すると最下位の一つ上の順位賞をブービーといいます。このブービーは厳密にはゴルフ用語ではなく、勝負事で一番弱い人を意味する言葉でした。大航海時代、南の島々に飛べない鳥がいました。警戒心もなく簡単に捕まえることができるので”バカでのろま”という意味で使った言葉がブービーの語源になりました。
ちなみに、最下位の一つ上の順位をブービー賞にするのは日本独自の文化で(アジア圏に広まった)、欧米ではブービー賞は最下位なのです。高度成長期に社用族ゴルファーが最下位の一つ上の順位賞にしたことが誤用されて、そのまま定着したという説が有力で、日本ではゴルフ用語としても問題はありません。
ゴルフスイングでは、不必要に曲がった肘のことをチキンウィングと呼んで戒めています。右打ちの人の左肘がインパクト時に曲がっている様子を鶏の手羽に例えたのと、チキンという言葉に含まれる臆病者という意味合いも含んでいるようです。いずれにしても、鳥にまつわるゴルフ用語にはゴルファーの子供に戻ったようなワクワク感がDNAとして引き継がれているような気がしてなりません。
全てのゴルファーには大なり小なり見えないだけで翼があります。楽しみながら舞い上がってプレーできるのもゴルフの魅力なのです。言葉の意味を知れば、バーディーなんて簡単だと思えてくれば最高です。