ゴルフはいわゆる審判がいないスポーツです。同じ組で一緒にプレーしていても、それは”同伴”プレーヤーであり、あなたをジャッジする存在ではありません。では、どのように競技が進んでいくかといえば、『自らが申告する』ことで成り立っています。つまり、自分をジャッジするのは自分なのです。
もちろん正式の競技であれば競技委員が設置されますが、これは、プレーヤーがジャッジに困った時に正しいルールへ導いてくれる存在であり、審判ではありません。また、プレーヤー同士がマーカーとなりますが、これもプレーをスムーズに進行するために競技委員の補助的役割に過ぎないのです。
あくまでもゴルフで起こる様々な出来事は、自分で判断しなければなりません。これはゴルフの神髄ともいうべき事柄です。紳士のスポーツであるゴルフは、自分が紳士であるか?を問うスポーツでもあるのです。
あなたは、ラウンド中にちょっとしたルール違反を犯したことはありませんか?例えば林の中で葉っぱなどのルースインペディメントを取り除いていた際に、わずかにボールが動いてしまったけれど、「大したことないから、まぁいいか。」とそのまま打ってしまうなどのケースです。
プライベートなラウンドではもちろん、実は競技でもこうしたことは起きています。「自分が得したわけでもないから」「誰も見ていないから」「申告するのが面倒だから」「こんなことでペナルティを受けたくないから」とそのままプレーを続行してしまうのです。これは、プロの世界でもないとは言い切れない部分です。
その点では「競技でも」というより、「競技だからこそ」といった方が正しいかもしれませんね。そんな中、男子トーナメント「パナソニックオープン2016」において、ケーシー・オトゥール選手(アメリカ)が取った行動は、清々しいものでした。ぜひ、ご紹介したいと思います。
2016年4月22日「パナソニックオープン2016」2日目
アジアンツアーとの共同主管で行われる「パナソニックオープン」は国際色豊かな選手が揃います。アジアンツアーを主戦場とするアメリカ出身のケーシー・オトゥール選手もそのひとりでした。
予選2日目の段階で、予選通過当落線上にあったオトゥール選手ですが、インスタート前半の18番ホールのバンカーショットの際に「バックスイングでクラブのソールがバンカーの砂に触れたようだ」とラウンド終了後に申告してきました。
同伴競技者の高山選手や競技委員を交えモニターで確認したものの、その事実は確認できず、高山選手をはじめ、近くにいたボランティアスタッフは誰も「触れていなかったと思う」と口を揃えましたが、オトゥール選手本人が納得せず、ゴルフ規則13-4bにより2打罰が課せられることになったのです。
ペナルティ前のオトゥール選手のスコアは+1で、この時点では予選通過ラインでした。しかしペナルティを加えたことで+3となり予選落ちが確定してしまったのです。
プロにとって予選敗退は賞金を得ることができない最悪な結果です。特にこの試合のために来日した選手にはそのダメージが大きいでしょう。しかし彼は周囲がセーフであると言ったのにもかかわらず、自らにペナルティを課したのです。
これは、本人が「間違いなく砂に触れてしまった」という確信があったからだとは思いますが、果たして自分だったら、このような状況でこの判断ができるでしょうか?オトゥール選手の潔い行動は、自分のゴルフを見つめ直す良い機会を与えてくれました。
おわりに
ルール通りに行動することが賞賛されるわけではありません。しかし、ルール通りに行動することの難しさをゴルファーの方なら理解できると思います。私は、この場面で自分に正直になれるか自信がありません。
あなたはオトゥール選手になれますか?